バトンがまわってきました
「DEEP FOREST」のみやこや様よりバトンがまわってきましたので、受け取らせて頂きました。
このバトンの諸事情(?)から・・・
って、みやこや様に言われたのですが(笑)
みやこや様、ありがとうございます。
SKIPへのお題は「キュウゾウ殿」です。
■朝、起きたらキュウゾウ殿がとなりに寝てました。さてどうする???
焦る。
もう焦りまくります。
「相手が違うだろ」って、小声でキュウゾウ殿にツッコミを入れたりして。
■そんなことしてるとキュウゾウ殿が目覚めた!どうする?
ええーっ!?
どうする?俺?
みたいな展開に・・・。
カードには何て書いてあるのか、何枚あるのか?
■キュウゾウ殿につくってあげたい自慢料理は?
この子はねー、食が細いんですよ。
でも、新しいエンディングでは嬉しそうにおにぎりを食べていたから、おにぎりなら食べてくれるのかなあ。
■キュウゾウ殿とドライブ、どこに行く?
斬艦刀は操縦できるということはわかっているので、それに乗せてもらって・・・いや、あんな先っちょには私、立てませんからー。
操縦席の下にでも入れてもらって・・・お尻が入るのか?
で、神無村(かんなむら)へ行きます。
キュウゾウ殿の顔で、お米をタダで分けてもらいます。
命をかけて村を守ったのだもの、いいですよね、長老さん。
■キュウゾウ殿があなたにひとコト言ってくれるって!なんていってもらう?
「かたじけない」
やっぱり、感謝の言葉はいいですねえ。
■キュウゾウ殿があなたになにかひとつしてくれるって!時間は5分。
ズバリ、あのインナーを着てみせてください。
あ。いや、脱いでいるところの方が萌える、のか。
すみませんすみません、石を投げないで下さい。
恥ずかしいから(?)覗き見希望です。
キュウゾウ殿に、話は通しておいてください。
でないと、殺気を感じて斬りかかってくる可能性があるので。
■あなたがキュウゾウ殿に1つだけなにかしてあげられます。
カンベエさんと二人っきりにしてさしあげましょう。
斬り合って勝負をつけるもよし、他のことについて決着をつけるもよし。
■キュウゾウ殿にひとコト
「かっこいい」
彼の生き様、態度、全てをひっくるめて。
後ろ姿に向かって(都へ向かうラストのシーン希望)、そっと呟きたい。
■次に回す人
やはりココは、赤ばっと様で。
御題は「王凱歌」でいかがでしょうか。
みやこや様、ありがとうございました。
楽しく回答することができました。
ほとんど自己満足でしたが・・・。(笑)
無駄に長くなって、すみませんでした。
-
2006/08/10 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 6 |
- − | [Edit]
- ▲
銀魂と・・・

この頃、SKIPは「銀魂」にはまっておりまして。
目つきが悪くて綺麗で、腕っ節の強い子はいいですねー。
しかも、犬とかって言われているし・・・。
で、生まれたのが「SAMURAI7」とのコラボです。
予告編風ですね。
小説には致しません。
設定・構成・皆様のひんしゅく等々、問題が山積みですので。
ほんのお遊び程度のものですが、大丈夫という方だけどうぞ。
清冽(せいれつ)
野伏せりとの戦が迫っているとはいえ、朝はやはり清々しく生を感じ
て、キュウゾウは深く息を吸い込んだ。
神無村(かんなむら)のリキチの家では、サムライ達が朝げの膳を囲んでいる。
キュウゾウも、茶碗によそられたほかほかの御飯を前に、箸を取った。
「キュウさん・・・」
後ろからかけられた声に、キュウゾウは箸を手の中で握り潰した。
他のサムライ達は凶事を予感して、箸を止めた。
キュウゾウが、ゆっくりと振り返る。
彼の金のそれとは対となる髪の色、銀色が見えた。
「銀殿・・・」
☆
キュウゾウは殺気を感じて、体をひねりながら背中の二刀を抜こうとした。
ガキッ!
振り下ろされた刀を、背中の、半分ほど上に抜きかけた刀で止めた。
下から抜いた刀は、相手の鞘と交差していた。
見守っていたサムライ達の背中に、冷たい汗が流れる。
キュウゾウが、顔をほんの少し傾けて、斬りかかって来た男の顔を見た。
「土方・・・」
「キュウゾウ、本当に生きていたんだな」
銀時が近づいて来て、二人の刀を握っている手に自分の手を置いた。
「再会だ、な」
「おまえが死んだって、虹雅渓(こうがきょう)の表も裏の世界も大騒ぎだぜ」
土方はふっと笑って、そう言った。
☆
「カンベエ」
キュウゾウは、振り向かずに声をかける。
「必ず帰る」
「そんな、勝手な!」
噛みついて来たのは、カツシロウだった。
しかし、カンベエはキュウゾウの背中に向かって、穏やかに言った。
「儂(わし)との約束、忘れるな」
☆
「土方ー!」
キュウゾウは、鉄の塊を蹴って宙を跳んだ。
素早く紅い戦闘服の前を開けると、吹っ飛ばされた土方を包み込むようにして抱き込んだ。
そこへ更に撃ち込まれる弾丸。
右手の刀だけで、それを弾いた。
「銀殿ー!」
「俺は、大丈夫だ!早く逃げろ!」
☆
「大人しく、我々の犬のままでいれば良いものを」
聞こえてきた声に、土方は身を固くした。
☆
「言えなかった・・・。笑顔を見てしまうと、明日も会いたくなった。」
土方は、空へ向かって手を伸ばした。
彼の漆黒の髪も瞳も、暗闇の中に溶けてしまいそうだ。
「やっぱり、俺は自己中だ」
「何かあったと察してしまう、自分の勘の鋭さが嫌いだ」
銀時は、土方の手をとった。
彼が、闇に溶けてしまわないように。
友の心が交錯する。
その中に身を置くのも悪くないと、キュウゾウは目を閉じた。
自分の瞳の紅(あか)は、たぶん彼等には強過ぎる。
☆
「行こうぜ。俺達の武士道(ルール)、あいつらに見せてやる」
銀時は、木刀をひょいと肩にかついだ。
土方が、ふーっと煙草の煙を吐いた。
穏やかな煙の向こうで、いつもの冷静さに戻っていた。
キュウゾウは両手に、鮮やかな銀色の刀を二振り引っ提げていた。
もうだいぶ斬った。
だが、再びそれ以上の数のものを斬るだろう。
そいつらに向かって、三人の侍は歩き出した。
☆ あ・・・ホント、ごめんなさい。
野伏せりとの戦が迫っているとはいえ、朝はやはり清々しく生を感じ
て、キュウゾウは深く息を吸い込んだ。
神無村(かんなむら)のリキチの家では、サムライ達が朝げの膳を囲んでいる。
キュウゾウも、茶碗によそられたほかほかの御飯を前に、箸を取った。
「キュウさん・・・」
後ろからかけられた声に、キュウゾウは箸を手の中で握り潰した。
他のサムライ達は凶事を予感して、箸を止めた。
キュウゾウが、ゆっくりと振り返る。
彼の金のそれとは対となる髪の色、銀色が見えた。
「銀殿・・・」
☆
キュウゾウは殺気を感じて、体をひねりながら背中の二刀を抜こうとした。
ガキッ!
振り下ろされた刀を、背中の、半分ほど上に抜きかけた刀で止めた。
下から抜いた刀は、相手の鞘と交差していた。
見守っていたサムライ達の背中に、冷たい汗が流れる。
キュウゾウが、顔をほんの少し傾けて、斬りかかって来た男の顔を見た。
「土方・・・」
「キュウゾウ、本当に生きていたんだな」
銀時が近づいて来て、二人の刀を握っている手に自分の手を置いた。
「再会だ、な」
「おまえが死んだって、虹雅渓(こうがきょう)の表も裏の世界も大騒ぎだぜ」
土方はふっと笑って、そう言った。
☆
「カンベエ」
キュウゾウは、振り向かずに声をかける。
「必ず帰る」
「そんな、勝手な!」
噛みついて来たのは、カツシロウだった。
しかし、カンベエはキュウゾウの背中に向かって、穏やかに言った。
「儂(わし)との約束、忘れるな」
☆
「土方ー!」
キュウゾウは、鉄の塊を蹴って宙を跳んだ。
素早く紅い戦闘服の前を開けると、吹っ飛ばされた土方を包み込むようにして抱き込んだ。
そこへ更に撃ち込まれる弾丸。
右手の刀だけで、それを弾いた。
「銀殿ー!」
「俺は、大丈夫だ!早く逃げろ!」
☆
「大人しく、我々の犬のままでいれば良いものを」
聞こえてきた声に、土方は身を固くした。
☆
「言えなかった・・・。笑顔を見てしまうと、明日も会いたくなった。」
土方は、空へ向かって手を伸ばした。
彼の漆黒の髪も瞳も、暗闇の中に溶けてしまいそうだ。
「やっぱり、俺は自己中だ」
「何かあったと察してしまう、自分の勘の鋭さが嫌いだ」
銀時は、土方の手をとった。
彼が、闇に溶けてしまわないように。
友の心が交錯する。
その中に身を置くのも悪くないと、キュウゾウは目を閉じた。
自分の瞳の紅(あか)は、たぶん彼等には強過ぎる。
☆
「行こうぜ。俺達の武士道(ルール)、あいつらに見せてやる」
銀時は、木刀をひょいと肩にかついだ。
土方が、ふーっと煙草の煙を吐いた。
穏やかな煙の向こうで、いつもの冷静さに戻っていた。
キュウゾウは両手に、鮮やかな銀色の刀を二振り引っ提げていた。
もうだいぶ斬った。
だが、再びそれ以上の数のものを斬るだろう。
そいつらに向かって、三人の侍は歩き出した。
☆ あ・・・ホント、ごめんなさい。
-
2006/06/19 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行9(最終回)

9.村で待つ《別れ》
「終わったようですね」
カンベエの刀がめりこんだ柱の陰から、シチロージが顔を出してラウンジの方の様子を窺う。
「皆、無事か」
ゴロベエが、シチロージの上から顔を出した。
「先生とキュウゾウ殿は、和解できたのでしょうか」
カツシロウが、柱の後ろから這い出て来る。
「いやはや、それにしても派手な夫婦喧嘩で」
ヘイハチの揶揄(やゆ)に、皆が笑った。
「キュウゾウ様は、素直じゃないです。いつまでたっても、成長しないですね」
幼い声が聞こえる。キクチヨの肩の上で、コマチが大人びたことを言っている。
「まったく、まわりがやきもきするでござるよ」
キクチヨまでもが、困ったというような言い方をしている。
サムライ一同、大きなため息をついた。この二人に言われるとは・・・。
「気持ちは、伝え合わなくっちゃいけませんです」
「その点、オレ様達は完璧だぜ」
「はい。オラ、おっちゃまのこと、だーい好きです」
「ありがとよ!」
キクチヨとコマチの微笑ましい会話に、サムライ達はますます大きなため息をつくのであった。
「・・・ウゾウ、助けて」という哀れな声に、一同そちらを見ると、壁に突き刺さったキュウゾウの刀に、ヒョーゴが磔(はりつけ)にされていた。やれやれ、犠牲者がもう一人いたか。
ゴロベエとキクチヨが行って、刀を抜いてやる。シチロージは、カンベエの刀を柱から抜いた。
ちょうどそこへ、カンベエとキュウゾウがやって来る。
シチロージがカンベエにもったいぶって刀を渡すと、カンベエは照れたように笑った。
キュウゾウも背中に刀を収めた。その様子を、キクチヨが後ろへ回ってじっと見ていた。
「わかんねえ、何度見ても。どうしてちゃんと収まっちまうんだ?」
ふとキュウゾウが見ると、ヒョーゴがホテルから出て行くところだった。キュウゾウは彼を追った。
「ヒョーゴ!」
低く鋭い声で呼び止められて、ヒョーゴは振り返った。キュウゾウが包みを、ぽーんと投げて寄越した。
「俺に?」
ヒョーゴは舞い上がる気持ちを、やっとのことで抑えていた。
「開けてもよいか?」
うなずくキュウゾウ。
包みの中から、簪(かんざし)が出て来た。
「あ!」
「おぬしのを切ってしまった故」
「ありがとう」
ヒョーゴは、思わずキュウゾウに駆け寄って行く。(ヒョーゴの気持ちとしては、スローモーションで)
ヒョーゴはぎゅうううっと、キュウゾウを抱きしめた。
「あのな、キュウゾウ。おまえさえよければ」
「よければ、これから儂(わし)らと一緒に飲みに行かんか」
儂って?と、ヒョーゴが不審に思って顔を上げると、
「おっさま!?」いや「島田!?」だった。
どうやら、キュウゾウとの間に高速で割り込んだらしい。
「早く離れてくれ」
「それは、こっちの台詞だ!この変態おやじめ」
ユキノが懇意にしている料亭に支度をしてもらって、一同そちらへ移動した。ヒョーゴも結局、ついて来た。
少々羽目を外して、楽しい宴会になりました。とさ。
旅の疲れと、カンベエとヒョーゴの間に挟まれて毒気(静かなるバトル)に当てられたのとで眠ってしまったキュウゾウを、カンベエがおんぶして夜道を歩いて行く。その後からキュウゾウの刀を抱えて、ヒョーゴがついて行く。
古(いにしえ)の都の月が、優しく男達を照らしている。月は特に、カンベエの背で眠る男が気に入ったらしい。金色の髪を自分のように輝かせていたし、その寝顔からは昼間の険しい表情を取り去っていた。
「ふーん。こんな顔、初めて見たな」
ヒョーゴが呟いた。それを聞いてカンベエがくすりと笑った。
「島田、おまえが与えているのか」
何を、とは言わなかった。言葉で形作れないもののように思えた。
「おぬしは?おぬしは与えてやらなかったのか」
「その前に、おまえに盗られた」
すっと月が雲に翳った。
「それは・・・悪いことをしたな」
「言うな。馬鹿め」
翌日、フロントで宿泊費を払おうとしたカンベエが目を剥いた。
「ゼロが多いように思うのだが」
「弁償してもらうぞえ」
商人(アキンド)言葉に振り返ると、アヤマロが立っていた。その後ろにはヒョーゴがいる。
アヤマロが指差す方向には、元ラウンジだった場所が・・・。今では瓦礫の山となっている。
アヤマロがヒョーゴの方へ手を伸ばすと、ヒョーゴはその手の上に算盤を乗せた。
「弁償金は全部で、こんなもんじゃ」
とアヤマロがパチパチと算盤を弾いて、その額をカンベエに示す。
「キュウゾウと折半すると、一人分はこの金額じゃ」
更にパチパチ弾いて、カンベエに示す。カンベエがアヤマロに近づいて行って、算盤を覗き込んだ。そして算盤の珠を弾く。
「このぐらいに負からんか」
「駄目じゃ」
つれなく言って、アヤマロは珠を戻した。
「で、キュウゾウの分は、未払いの給料と退職金を合わせて(パチパチ)弁償に充てたが」
アヤマロが、様子を見ていたキュウゾウを手招きする。懐から分厚い封筒を取り出して、彼に渡した。
「差額が出た。キュウゾウ、とっておくがよい」
「島田、貯金ぐらいないのか」
ヒョーゴが尋ねる。
「ない!」
「この、貧乏ザムライめが」
ヒョーゴに言われて、カンベエがキュウゾウを見る。物欲しそうなその目に、
「断る」
とキュウゾウは言い捨てた。金にはシビアな新妻殿であった。
その場でカンベエは、アヤマロの用心棒になることを契約させられてしまった。
カンベエを引きずって行くヒョーゴは、嬉しそうだ。
「島田、先輩の言うことに口答えはするな。ビシビシ、仕込んでやるからな」
それを見送るキュウゾウ。
「カンベエ、村で待つ」
と言って、小さく手を振った。
駅にキュウゾウが一人で現れたことに驚いたシチロージは、事情を聞くや、金策に奔走したとか。持つべきものは、古女房殿か。
(終)
☆ 皆様、最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメディ(一応ラブ・コメディ?(^_^;))になっていたのかどうかはわかりませんが、つたない文章で申し訳ありませんでした。
カンベエの刀がめりこんだ柱の陰から、シチロージが顔を出してラウンジの方の様子を窺う。
「皆、無事か」
ゴロベエが、シチロージの上から顔を出した。
「先生とキュウゾウ殿は、和解できたのでしょうか」
カツシロウが、柱の後ろから這い出て来る。
「いやはや、それにしても派手な夫婦喧嘩で」
ヘイハチの揶揄(やゆ)に、皆が笑った。
「キュウゾウ様は、素直じゃないです。いつまでたっても、成長しないですね」
幼い声が聞こえる。キクチヨの肩の上で、コマチが大人びたことを言っている。
「まったく、まわりがやきもきするでござるよ」
キクチヨまでもが、困ったというような言い方をしている。
サムライ一同、大きなため息をついた。この二人に言われるとは・・・。
「気持ちは、伝え合わなくっちゃいけませんです」
「その点、オレ様達は完璧だぜ」
「はい。オラ、おっちゃまのこと、だーい好きです」
「ありがとよ!」
キクチヨとコマチの微笑ましい会話に、サムライ達はますます大きなため息をつくのであった。
「・・・ウゾウ、助けて」という哀れな声に、一同そちらを見ると、壁に突き刺さったキュウゾウの刀に、ヒョーゴが磔(はりつけ)にされていた。やれやれ、犠牲者がもう一人いたか。
ゴロベエとキクチヨが行って、刀を抜いてやる。シチロージは、カンベエの刀を柱から抜いた。
ちょうどそこへ、カンベエとキュウゾウがやって来る。
シチロージがカンベエにもったいぶって刀を渡すと、カンベエは照れたように笑った。
キュウゾウも背中に刀を収めた。その様子を、キクチヨが後ろへ回ってじっと見ていた。
「わかんねえ、何度見ても。どうしてちゃんと収まっちまうんだ?」
ふとキュウゾウが見ると、ヒョーゴがホテルから出て行くところだった。キュウゾウは彼を追った。
「ヒョーゴ!」
低く鋭い声で呼び止められて、ヒョーゴは振り返った。キュウゾウが包みを、ぽーんと投げて寄越した。
「俺に?」
ヒョーゴは舞い上がる気持ちを、やっとのことで抑えていた。
「開けてもよいか?」
うなずくキュウゾウ。
包みの中から、簪(かんざし)が出て来た。
「あ!」
「おぬしのを切ってしまった故」
「ありがとう」
ヒョーゴは、思わずキュウゾウに駆け寄って行く。(ヒョーゴの気持ちとしては、スローモーションで)
ヒョーゴはぎゅうううっと、キュウゾウを抱きしめた。
「あのな、キュウゾウ。おまえさえよければ」
「よければ、これから儂(わし)らと一緒に飲みに行かんか」
儂って?と、ヒョーゴが不審に思って顔を上げると、
「おっさま!?」いや「島田!?」だった。
どうやら、キュウゾウとの間に高速で割り込んだらしい。
「早く離れてくれ」
「それは、こっちの台詞だ!この変態おやじめ」
ユキノが懇意にしている料亭に支度をしてもらって、一同そちらへ移動した。ヒョーゴも結局、ついて来た。
少々羽目を外して、楽しい宴会になりました。とさ。
旅の疲れと、カンベエとヒョーゴの間に挟まれて毒気(静かなるバトル)に当てられたのとで眠ってしまったキュウゾウを、カンベエがおんぶして夜道を歩いて行く。その後からキュウゾウの刀を抱えて、ヒョーゴがついて行く。
古(いにしえ)の都の月が、優しく男達を照らしている。月は特に、カンベエの背で眠る男が気に入ったらしい。金色の髪を自分のように輝かせていたし、その寝顔からは昼間の険しい表情を取り去っていた。
「ふーん。こんな顔、初めて見たな」
ヒョーゴが呟いた。それを聞いてカンベエがくすりと笑った。
「島田、おまえが与えているのか」
何を、とは言わなかった。言葉で形作れないもののように思えた。
「おぬしは?おぬしは与えてやらなかったのか」
「その前に、おまえに盗られた」
すっと月が雲に翳った。
「それは・・・悪いことをしたな」
「言うな。馬鹿め」
翌日、フロントで宿泊費を払おうとしたカンベエが目を剥いた。
「ゼロが多いように思うのだが」
「弁償してもらうぞえ」
商人(アキンド)言葉に振り返ると、アヤマロが立っていた。その後ろにはヒョーゴがいる。
アヤマロが指差す方向には、元ラウンジだった場所が・・・。今では瓦礫の山となっている。
アヤマロがヒョーゴの方へ手を伸ばすと、ヒョーゴはその手の上に算盤を乗せた。
「弁償金は全部で、こんなもんじゃ」
とアヤマロがパチパチと算盤を弾いて、その額をカンベエに示す。
「キュウゾウと折半すると、一人分はこの金額じゃ」
更にパチパチ弾いて、カンベエに示す。カンベエがアヤマロに近づいて行って、算盤を覗き込んだ。そして算盤の珠を弾く。
「このぐらいに負からんか」
「駄目じゃ」
つれなく言って、アヤマロは珠を戻した。
「で、キュウゾウの分は、未払いの給料と退職金を合わせて(パチパチ)弁償に充てたが」
アヤマロが、様子を見ていたキュウゾウを手招きする。懐から分厚い封筒を取り出して、彼に渡した。
「差額が出た。キュウゾウ、とっておくがよい」
「島田、貯金ぐらいないのか」
ヒョーゴが尋ねる。
「ない!」
「この、貧乏ザムライめが」
ヒョーゴに言われて、カンベエがキュウゾウを見る。物欲しそうなその目に、
「断る」
とキュウゾウは言い捨てた。金にはシビアな新妻殿であった。
その場でカンベエは、アヤマロの用心棒になることを契約させられてしまった。
カンベエを引きずって行くヒョーゴは、嬉しそうだ。
「島田、先輩の言うことに口答えはするな。ビシビシ、仕込んでやるからな」
それを見送るキュウゾウ。
「カンベエ、村で待つ」
と言って、小さく手を振った。
駅にキュウゾウが一人で現れたことに驚いたシチロージは、事情を聞くや、金策に奔走したとか。持つべきものは、古女房殿か。
(終)
☆ 皆様、最後まで読んでくださってありがとうございました。
コメディ(一応ラブ・コメディ?(^_^;))になっていたのかどうかはわかりませんが、つたない文章で申し訳ありませんでした。
-
2006/05/07 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 4 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行8

8.おぬしにはかなわん《お宿》
ホテルのラウンジで、カンベエはお茶の時間を愉しんでいた。ロビーの方はチェックインをする客達でざわついていたが、窓際の隅のこの席は落ち着くことができた。
通りを見渡しながら待っているのは、たぶん紅い上着を翻して颯爽と歩いて来るであろう若い人。
だが、一向にやって来る気配がない。何杯目かのお茶のお代わりを頼んで、カンベエは顎を撫でた。
「へそを曲げて、村へ帰ってしまったのではないだろうな」
新しく淹れたお茶が、カンベエの前に置かれた。と、その中に天井から落ちて来たらしい埃が入る。
「?」と見上げたカンベエ。
すると天井が、切り裂かれたように幾つかの塊となって落ちて来た。
「地震だ!」
誰かが叫ぶ。ラウンジでやはりお茶の時間を愉しんでいた客達が、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
瓦礫に混じって、紅い影が落ちて来る。それが真っ直ぐにカンベエに向かって来た。
「参る!」
低く呟くような声。同時に銀色のきらめきが見えた。カンベエは刀を抜きざま、その光をなぎ払った。
濃い霧のような埃の中、なぎ払われた紅い人物は回転しながら壁を蹴って、再びカンベエを襲う。
「キュウゾウ、待っていたぞ」
カンベエは刀を構えて迎え撃つ。二ふりの刀が交互に、カンベエの刀に打ちつけられる。
「怒っておるのか」
カンベエにそう言われて、ますます刀にこめる力が強くなるキュウゾウ。カンベエが堪らなくなって彼から離れると、キュウゾウの刀はテーブルやソファーを真っ二つにした。
逃げたカンベエが床を蹴って跳び、上からキュウゾウを狙う。キュウゾウはカンベエに向かって、右手の刀を投げつけた。カンベエがそれを払う。刀が勢い良く飛んで行って、ロビーの壁に突き刺さった。
迫って来るカンベエに対して、キュウゾウは両手で一振りとなった刀を握り締める。
カンベエの刀とキュウゾウの刀が激突する。両方とも弾けて飛んだ。キュウゾウの刀は、壁に刺さっている刀の隣に交差して刺さった。カンベエの刀は、ロビー中央の太い柱にめりこんだ。
刀が弾け飛んだ瞬間に、カンベエもキュウゾウもテーブルの上にあったモノを摑んで、互いの首に押し当てた。
舞い上がっていた埃がようやく落ち着いてきた時、カンベエは自分がコーヒースプーンをキュウゾウの首に押し当てているのを発見した。そろっと横目で見ると、自分の首に押し当てられているのは、竹の楊枝に刺さった羊羹である。
カンベエは少し顔をずらすと、その羊羹をぱくっと食べた。
「しゅまぬ。ひんひゃいをひゃふぇひゃな」←「すまぬ。心配をかけたな」
「おぬしを斬るのは、この俺だ」
キュウゾウの思い詰めたようなもの言いに、胸が痛くなる。
「そうだな。儂(わし)も他の者に、斬られるつもりはない」
自分でも驚くぐらい、優しい口調になってしまう。彼と向かい合うといつもそうだ、とカンベエは苦笑した。
カンベエが、コーヒースプーンを捨てる。カラーンと異様に音が響いた。キュウゾウはそのスプーンを目で追った。
「このような可愛い行動に出られると、かなわんな」
とカンベエが笑うと、キュウゾウはふて腐れたように睨んできた。
そのキュウゾウの可愛い行動やらのとばっちりを食った人々が、呆然として二人を見ていた。
柱の陰では、ほっとしている者達がいた。
(つづく)
☆ しまった!
お宿に着いたのに、キュウゾウ殿が暴れてしまった。
二人の夜はどうなるの?(18禁にはなりません(^_^;))
次回、最終回です。
通りを見渡しながら待っているのは、たぶん紅い上着を翻して颯爽と歩いて来るであろう若い人。
だが、一向にやって来る気配がない。何杯目かのお茶のお代わりを頼んで、カンベエは顎を撫でた。
「へそを曲げて、村へ帰ってしまったのではないだろうな」
新しく淹れたお茶が、カンベエの前に置かれた。と、その中に天井から落ちて来たらしい埃が入る。
「?」と見上げたカンベエ。
すると天井が、切り裂かれたように幾つかの塊となって落ちて来た。
「地震だ!」
誰かが叫ぶ。ラウンジでやはりお茶の時間を愉しんでいた客達が、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
瓦礫に混じって、紅い影が落ちて来る。それが真っ直ぐにカンベエに向かって来た。
「参る!」
低く呟くような声。同時に銀色のきらめきが見えた。カンベエは刀を抜きざま、その光をなぎ払った。
濃い霧のような埃の中、なぎ払われた紅い人物は回転しながら壁を蹴って、再びカンベエを襲う。
「キュウゾウ、待っていたぞ」
カンベエは刀を構えて迎え撃つ。二ふりの刀が交互に、カンベエの刀に打ちつけられる。
「怒っておるのか」
カンベエにそう言われて、ますます刀にこめる力が強くなるキュウゾウ。カンベエが堪らなくなって彼から離れると、キュウゾウの刀はテーブルやソファーを真っ二つにした。
逃げたカンベエが床を蹴って跳び、上からキュウゾウを狙う。キュウゾウはカンベエに向かって、右手の刀を投げつけた。カンベエがそれを払う。刀が勢い良く飛んで行って、ロビーの壁に突き刺さった。
迫って来るカンベエに対して、キュウゾウは両手で一振りとなった刀を握り締める。
カンベエの刀とキュウゾウの刀が激突する。両方とも弾けて飛んだ。キュウゾウの刀は、壁に刺さっている刀の隣に交差して刺さった。カンベエの刀は、ロビー中央の太い柱にめりこんだ。
刀が弾け飛んだ瞬間に、カンベエもキュウゾウもテーブルの上にあったモノを摑んで、互いの首に押し当てた。
舞い上がっていた埃がようやく落ち着いてきた時、カンベエは自分がコーヒースプーンをキュウゾウの首に押し当てているのを発見した。そろっと横目で見ると、自分の首に押し当てられているのは、竹の楊枝に刺さった羊羹である。
カンベエは少し顔をずらすと、その羊羹をぱくっと食べた。
「しゅまぬ。ひんひゃいをひゃふぇひゃな」←「すまぬ。心配をかけたな」
「おぬしを斬るのは、この俺だ」
キュウゾウの思い詰めたようなもの言いに、胸が痛くなる。
「そうだな。儂(わし)も他の者に、斬られるつもりはない」
自分でも驚くぐらい、優しい口調になってしまう。彼と向かい合うといつもそうだ、とカンベエは苦笑した。
カンベエが、コーヒースプーンを捨てる。カラーンと異様に音が響いた。キュウゾウはそのスプーンを目で追った。
「このような可愛い行動に出られると、かなわんな」
とカンベエが笑うと、キュウゾウはふて腐れたように睨んできた。
そのキュウゾウの可愛い行動やらのとばっちりを食った人々が、呆然として二人を見ていた。
柱の陰では、ほっとしている者達がいた。
(つづく)
☆ しまった!
お宿に着いたのに、キュウゾウ殿が暴れてしまった。
二人の夜はどうなるの?(18禁にはなりません(^_^;))
次回、最終回です。
-
2006/05/06 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行7

7.罪なお方だ《平等院》
宇治の平等院の庭園に赤い毛氈(もうせん)を敷き、やはり赤い野点傘(のだてがさ)を広げてその下で茶の湯を楽しんでいる一組の男女がいた。茶を点てているのはシチロージ、もてなしを受けているのはユキノである。
「おや、雨が・・・。もそっとこっちへ寄りな」
「あい」
ユキノはシチロージの胸に頬を寄せた。
「幸せ過ぎて、怖いぐらい」
「苦労をかけてすまなかった。今日は女房孝行させてもらいましょ」
と軽く言いつつも、シチロージはそろそろと朱塗りの杖を引き寄せる。その様子に不安を覚えて、ユキノはシチロージにすがりついた手に力をこめた。
ユキノに心配するなと微笑んだのと同時に、杖の先から銀色の槍が飛び出した。その刃にがっちりと細身の長刀が絡みつく。飛び散った火花に、ユキノは思わず目をつぶった。
刀を槍に食いつかせたまま、キュウゾウがシチロージの背後に立っている。
「無粋なことをしないでください、キュウゾウ殿」
と、シチロージは後ろも見ずに言い放った。
「カンベエはどこだ」
「嫌だね、教えない」
キュウゾウはシチロージから離れると、まだ抜いていなかった下方の刀の柄に手を置いた。シチロージも彼を牽制しながら、立ち上がる。
「キュウゾウ様!」
ユキノが鋭く彼の名を呼んだので、二人の男は彼女を見た。
「お茶を一服。虹雅渓(こうがきょう)差配(さはい)アヤマロ様仕込みのお茶を点てていただけないでしょうか」
戸惑っていたようだが、キュウゾウは刀を収める。
「武骨者だが」
と言いながら、毛氈の上に正座をする。すっと背筋を伸ばした姿が美しい。
キュウゾウは抹茶の入った茶碗に湯を落とし、茶せんを真っ直ぐに立てると、もの凄い勢いでかき回し始めた。みるみるうちに、泡が立って行く。
呆気に取られている、シチロージとユキノ。
やがて二人の前に置かれた茶碗からは、緑色の泡が溢れていた。キュウゾウはうっすらと汗をかいている。
「ほ、ほう、これが商人(アキンド)風ですか」
シチロージが苦笑する。
口のまわりを泡だらけにして茶を飲んだが、液体はなく泡をすすることになった。
キュウゾウは懐から袋を取り出すと、シチロージとユキノの掌の上に金米糖(コンペートー)を乗せた。
「まあ、可愛らしい」
キュウゾウのぶすっとした表情と、小さくツンツン角を生やした金米糖との対比が可笑しくて、ユキノは笑った。
三人で雨に濡れる平等院を眺めた。
「建てられた当初は、極彩色の、それは艶やかなものだったらしいですよ」
ユキノに言われて、二人の男はそのさまを思い浮かべているようだった。
「カンベエ様は、こちらが女連れなものですから、遠慮してくださったのですよ」
やっと落ち着いたところでシチロージが説明すると、キュウゾウは微かにうなずいた。シチロージは、ふうっとため息をついた。
「もう、あなたには降参しますよ」
京の都を一生懸命にカンベエを追っている、そんな姿がいじらしかった。
「罪なお方だ、カンベエ様」
それからシチロージは、自分の隣でくすくす笑っているユキノを見た。
(やれやれ、キュウゾウ殿も罪なお方だ)
どうやらユキノも、彼の一連の行動に心をくすぐられたらしい。
「キュウゾウ殿、カンベエ様は熨斗(のし)をつけてあなたに差し上げますが、ユキノは盗らないでくださいよ」
何を言っているのかわからないという風のキュウゾウに、シチロージは一枚のメモを渡した。
「こちらにカンベエ様はいるはずです」
「かたじけない」
と立ち上がるキュウゾウ。
「お気をつけて」
とシチロージ。
「がんばれ、男の子」
とユキノが見送った。
「ねえ、おまえさん。さっきは妬いてくれたの?」
「そりゃあもう」
シチロージが柔らかく笑う。
「あら、雨が上がったみたい」
「それでも、しばらくは」
シチロージはユキノの肩を抱く。
「こうしていようよ」
シチロージにもたれかかるユキノ。
「あら、嬉しい。本気にしちまうよ」
「ああ」
そんな二人の世界を見せつけられる、観光客達であった。
(つづく)
☆ 今回、一番得した方は両手に花(金髪美人?)だったユキノさんでした。
「おや、雨が・・・。もそっとこっちへ寄りな」
「あい」
ユキノはシチロージの胸に頬を寄せた。
「幸せ過ぎて、怖いぐらい」
「苦労をかけてすまなかった。今日は女房孝行させてもらいましょ」
と軽く言いつつも、シチロージはそろそろと朱塗りの杖を引き寄せる。その様子に不安を覚えて、ユキノはシチロージにすがりついた手に力をこめた。
ユキノに心配するなと微笑んだのと同時に、杖の先から銀色の槍が飛び出した。その刃にがっちりと細身の長刀が絡みつく。飛び散った火花に、ユキノは思わず目をつぶった。
刀を槍に食いつかせたまま、キュウゾウがシチロージの背後に立っている。
「無粋なことをしないでください、キュウゾウ殿」
と、シチロージは後ろも見ずに言い放った。
「カンベエはどこだ」
「嫌だね、教えない」
キュウゾウはシチロージから離れると、まだ抜いていなかった下方の刀の柄に手を置いた。シチロージも彼を牽制しながら、立ち上がる。
「キュウゾウ様!」
ユキノが鋭く彼の名を呼んだので、二人の男は彼女を見た。
「お茶を一服。虹雅渓(こうがきょう)差配(さはい)アヤマロ様仕込みのお茶を点てていただけないでしょうか」
戸惑っていたようだが、キュウゾウは刀を収める。
「武骨者だが」
と言いながら、毛氈の上に正座をする。すっと背筋を伸ばした姿が美しい。
キュウゾウは抹茶の入った茶碗に湯を落とし、茶せんを真っ直ぐに立てると、もの凄い勢いでかき回し始めた。みるみるうちに、泡が立って行く。
呆気に取られている、シチロージとユキノ。
やがて二人の前に置かれた茶碗からは、緑色の泡が溢れていた。キュウゾウはうっすらと汗をかいている。
「ほ、ほう、これが商人(アキンド)風ですか」
シチロージが苦笑する。
口のまわりを泡だらけにして茶を飲んだが、液体はなく泡をすすることになった。
キュウゾウは懐から袋を取り出すと、シチロージとユキノの掌の上に金米糖(コンペートー)を乗せた。
「まあ、可愛らしい」
キュウゾウのぶすっとした表情と、小さくツンツン角を生やした金米糖との対比が可笑しくて、ユキノは笑った。
三人で雨に濡れる平等院を眺めた。
「建てられた当初は、極彩色の、それは艶やかなものだったらしいですよ」
ユキノに言われて、二人の男はそのさまを思い浮かべているようだった。
「カンベエ様は、こちらが女連れなものですから、遠慮してくださったのですよ」
やっと落ち着いたところでシチロージが説明すると、キュウゾウは微かにうなずいた。シチロージは、ふうっとため息をついた。
「もう、あなたには降参しますよ」
京の都を一生懸命にカンベエを追っている、そんな姿がいじらしかった。
「罪なお方だ、カンベエ様」
それからシチロージは、自分の隣でくすくす笑っているユキノを見た。
(やれやれ、キュウゾウ殿も罪なお方だ)
どうやらユキノも、彼の一連の行動に心をくすぐられたらしい。
「キュウゾウ殿、カンベエ様は熨斗(のし)をつけてあなたに差し上げますが、ユキノは盗らないでくださいよ」
何を言っているのかわからないという風のキュウゾウに、シチロージは一枚のメモを渡した。
「こちらにカンベエ様はいるはずです」
「かたじけない」
と立ち上がるキュウゾウ。
「お気をつけて」
とシチロージ。
「がんばれ、男の子」
とユキノが見送った。
「ねえ、おまえさん。さっきは妬いてくれたの?」
「そりゃあもう」
シチロージが柔らかく笑う。
「あら、雨が上がったみたい」
「それでも、しばらくは」
シチロージはユキノの肩を抱く。
「こうしていようよ」
シチロージにもたれかかるユキノ。
「あら、嬉しい。本気にしちまうよ」
「ああ」
そんな二人の世界を見せつけられる、観光客達であった。
(つづく)
☆ 今回、一番得した方は両手に花(金髪美人?)だったユキノさんでした。
-
2006/05/03 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行6

6.ご冗談を!《清水寺》
土産物屋で八つ橋を買って外へ出ると、ゴロベエは向かい側の店内にキュウゾウの姿を見つけた。声をかけようと思ったが、彼が出て来るまで待つことにした。キュウゾウが手にしていたのが、簪(かんざし)だったからだ。
「ほお。キュウゾウ殿も、隅には置けんな」
ゴロベエはにやりとした。しかし、神無村にキュウゾウと恋仲になるような物好きな、いや、理解のある女性がいただろうか。
道中で誤解を解いたキララとは、その後、カンベエを挟んで冷戦状態になっていた筈だ。とすると・・・???
「ゴロベエ殿」
「おわっ!」
いきなり低い声で名を呼ばれて、ゴロベエは八つ橋を落としそうになった。
キュウゾウが立っていた。
「おお、キュウゾウ殿。土産はもう買えたかな」
しまった!盗み見がバレたか。
それには答えずに、キュウゾウはすたすたと歩き出す。気まずい雰囲気を解消しようと、ゴロベエは買ったばかりの八つ橋を勧めた。
はむ、とキュウゾウは三角形の端っこを噛んだ。
何か小動物を餌付けしているような気分になって、更に握り飯を与えてみようとする。だが、こちらには首を振って拒絶する。
「ヘイハチ殿に」
「何よッ!エミノスケ(ホホ・エミノスケ−ヘイハチさんの芸名)のは食えて、アタシのは食えないっつうの?」
突然の高い声とおネエ言葉に、道行く人達が振り返る。
「いただきます」
キュウゾウが握り飯をひとつとる。
「この米は五郎兵衛米(ごろべえまい)といってな。いや、それがしが作っているのではないのだが、粘りもあって実にうまい。神無村の米に負けず劣らず、だな」
などと食べたり話しているうちに、清水寺の本堂へとやって来た。「清水の舞台」から下を覗き込んで、ゴロベエが感嘆の声を上げる。
「いやー、『清水の舞台から飛び降りる』と決意の程を表す言葉があるが、まっことわかる気がするな」
キュウゾウに同意を求めようと彼に顔を向けると、彼が欄干に足をかけている。
「あ、おい、危ないぞ」
「カンベエ!」
「は?カンベエ殿が?」
と訊ねる間もなく、キュウゾウが欄干を蹴って飛び降りてしまった。
悲鳴を上げて卒倒する女性。「身投げだ!」と大騒ぎになる。
ゴロベエも思わず、キュウゾウの後を追って飛び降りた。
注)良い子は真似しないでください。
「男の方も、飛び降りたぞ!」
(え゛?『男も』って?)
「心中だぁー!!」
ゴロベエはいつもの台詞で決めたかったのだが、懐から八つ橋が、ひとつ、またひとつとこぼれ落ちて行く。それを空中で食すのに、忙しくなってしまった。
地上に着くと、先に飛び降りたキュウゾウが、白い服の男の肩を摑んでこちらに向かせたところだった。
「ご冗談を!」
と小さく叫ぶキュウゾウ。どうやら、男をカンベエと見間違えたらしい。
「キュウゾウ殿、それはそれがしの台詞だ」
逃げるように去って行く男の後ろ姿を見送っているキュウゾウに、ゴロベエはため息をついた。
「確か、古女房殿が宇治へ行っている。ひょっとしたら、カンベエ殿も一緒かもしれんな」
古女房と聞いて、キュウゾウが恨めしそうな目をゴロベエに向けて来る。
「うーむ。罪なお方だ、カンベエ殿は」
背を向けたキュウゾウが、訊いてくる。
「音羽の滝はどこにある?」
「ん?」
「縁結びの水を飲め、とヘイハチ殿に言われたが」
「はあ?」
そこまでカンベエとのことを思い詰めていたのか、それとも・・・。先程、キュウゾウが買い求めていた簪のことも気になる。
「キュウゾウ殿、おぬしがわからん。縁結びをしたい相手は、男なのか?女なのか?いくらおぬしが二刀流とはいえ、そちらの方も両刀つか」
言い終わらないうちに、キュウゾウの背から抜かれた刀がゴロベエの目の前に突きつけられた。
「キ、キュウゾウ殿、言ってもよいか?」
こっくりとキュウゾウがうなずく。
「ご冗談を!」
(つづく)
☆本当にあるんですよ、五郎兵衛米(ごろべえまい)。
この記事を見つけて、嬉しくなって無理矢理キュウゾウ殿におにぎりを食べてもらいました。
「ほお。キュウゾウ殿も、隅には置けんな」
ゴロベエはにやりとした。しかし、神無村にキュウゾウと恋仲になるような物好きな、いや、理解のある女性がいただろうか。
道中で誤解を解いたキララとは、その後、カンベエを挟んで冷戦状態になっていた筈だ。とすると・・・???
「ゴロベエ殿」
「おわっ!」
いきなり低い声で名を呼ばれて、ゴロベエは八つ橋を落としそうになった。
キュウゾウが立っていた。
「おお、キュウゾウ殿。土産はもう買えたかな」
しまった!盗み見がバレたか。
それには答えずに、キュウゾウはすたすたと歩き出す。気まずい雰囲気を解消しようと、ゴロベエは買ったばかりの八つ橋を勧めた。
はむ、とキュウゾウは三角形の端っこを噛んだ。
何か小動物を餌付けしているような気分になって、更に握り飯を与えてみようとする。だが、こちらには首を振って拒絶する。
「ヘイハチ殿に」
「何よッ!エミノスケ(ホホ・エミノスケ−ヘイハチさんの芸名)のは食えて、アタシのは食えないっつうの?」
突然の高い声とおネエ言葉に、道行く人達が振り返る。
「いただきます」
キュウゾウが握り飯をひとつとる。
「この米は五郎兵衛米(ごろべえまい)といってな。いや、それがしが作っているのではないのだが、粘りもあって実にうまい。神無村の米に負けず劣らず、だな」
などと食べたり話しているうちに、清水寺の本堂へとやって来た。「清水の舞台」から下を覗き込んで、ゴロベエが感嘆の声を上げる。
「いやー、『清水の舞台から飛び降りる』と決意の程を表す言葉があるが、まっことわかる気がするな」
キュウゾウに同意を求めようと彼に顔を向けると、彼が欄干に足をかけている。
「あ、おい、危ないぞ」
「カンベエ!」
「は?カンベエ殿が?」
と訊ねる間もなく、キュウゾウが欄干を蹴って飛び降りてしまった。
悲鳴を上げて卒倒する女性。「身投げだ!」と大騒ぎになる。
ゴロベエも思わず、キュウゾウの後を追って飛び降りた。
注)良い子は真似しないでください。
「男の方も、飛び降りたぞ!」
(え゛?『男も』って?)
「心中だぁー!!」
ゴロベエはいつもの台詞で決めたかったのだが、懐から八つ橋が、ひとつ、またひとつとこぼれ落ちて行く。それを空中で食すのに、忙しくなってしまった。
地上に着くと、先に飛び降りたキュウゾウが、白い服の男の肩を摑んでこちらに向かせたところだった。
「ご冗談を!」
と小さく叫ぶキュウゾウ。どうやら、男をカンベエと見間違えたらしい。
「キュウゾウ殿、それはそれがしの台詞だ」
逃げるように去って行く男の後ろ姿を見送っているキュウゾウに、ゴロベエはため息をついた。
「確か、古女房殿が宇治へ行っている。ひょっとしたら、カンベエ殿も一緒かもしれんな」
古女房と聞いて、キュウゾウが恨めしそうな目をゴロベエに向けて来る。
「うーむ。罪なお方だ、カンベエ殿は」
背を向けたキュウゾウが、訊いてくる。
「音羽の滝はどこにある?」
「ん?」
「縁結びの水を飲め、とヘイハチ殿に言われたが」
「はあ?」
そこまでカンベエとのことを思い詰めていたのか、それとも・・・。先程、キュウゾウが買い求めていた簪のことも気になる。
「キュウゾウ殿、おぬしがわからん。縁結びをしたい相手は、男なのか?女なのか?いくらおぬしが二刀流とはいえ、そちらの方も両刀つか」
言い終わらないうちに、キュウゾウの背から抜かれた刀がゴロベエの目の前に突きつけられた。
「キ、キュウゾウ殿、言ってもよいか?」
こっくりとキュウゾウがうなずく。
「ご冗談を!」
(つづく)
☆本当にあるんですよ、五郎兵衛米(ごろべえまい)。
この記事を見つけて、嬉しくなって無理矢理キュウゾウ殿におにぎりを食べてもらいました。
-
2006/05/01 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行5

5.行けぇーっ!《銀閣》
*若干、ハチ×キュウ風味があります。
お気をつけください。
ヘイハチの目の前を、ひらひらと誘うように舞っているものだから、むんずとその紅いものを摑んでしまった。途端に腕にかかる確かな重さ。そして殺気。
「あ・・・?」
とヘイハチが見上げると、自分の手の中にあるものと同じ色の瞳と出会った。
彼の紅い上着の端っこがヘイハチの手の中にあるせいで、すっかり上着の後ろがめくれあがってしまい(スカートめくり?)黒のボディスーツに覆われてはいるものの形の良い足があらわになっていた。
「キュウゾウ殿でしたか。いや、てっきり私はチョウチョを捕まえたと思いました」
キュウゾウが嫌そうに紅い上着を引っ張ると、ヘイハチの手からするりとその布が抜けていった。
「では、お詫びにおにぎりを差し上げましょう」
満面の笑みで、竹の皮の上に並んだおにぎりをひとつとると、キュウゾウに差し出した。だが、彼は小さく首を振って「いらない」という意思表示をした。
「そうですか。今朝、私が神無村を出る時にこさえてきたのですが、何かご不満でも?」
ヘイハチの目が、ゴゴゴッと(轟音?と共に)だんだん開かれて行く。
「いただこう」
キュウゾウはさっと、ヘイハチの手からおにぎりをとった。
ヘイハチの開きかけた目が、再び糸のように細められた。
「お粗末さまです」
銀閣寺の門の前で、男二人が向かい合っておにぎりを頬張っている。
キュウゾウがふっと手を伸ばして、ヘイハチの頬に触れた。
「?」
キュウゾウが自分の方へ向けた指の先には、飯粒が乗っていた。
「ありゃま、おべんとがついてましたか。こりゃどうも」
ヘイハチはあーんと口を開けて、キュウゾウの指ごとぱくっと食べてしまった。
その様子を見ていた、一部の女子達がざわついた。「キュウ×ハチ?」「ハチ×キュウよね」
キュウゾウはそろっと、ヘイハチの口から指を抜いた。
「カンベエは来たか」
キュウゾウが上着の端で指を拭くさまを見ながら、ヘイハチが答える。
「はて?私はひとりでこちらに来ましたので。カンベエ様は、えーと」
ヘイハチはおにぎりの包みを、しまい始めた。
「それよりも、私もまだ中に入っていないんですよ。一緒に銀閣を見ましょう」
キュウゾウの背中を押しながら進んで行くと、生垣の爽やかな緑が二人を迎えてくれた。現実から別の世界へ入ったような、そんな錯覚を起こさせる。
「赤い椿の花が、あなたの目の色に合っていますね」
そんなことを、ヘイハチはキュウゾウの目を覗き込む言い訳にした。
「金閣に比べて、地味ですけど、私はこちらの方が好きなんです。って、キュウゾウ殿!」
ヘイハチの目がぐわっと開いた。
「その白砂の上に、足跡をつけてはいけません」
キュウゾウが慌てて足を引っ込める。
「・・・承知」
まっさらな雪が積もっているのを見たら、この人、一番にその上を歩きたくなるんだろうな。と呆れながらも、その気持ちがわからないでもない。
キュウゾウの手が、そろそろと背中に伸びるのを見とがめたヘイハチ。
「それから」
目が、ぐわっぐわっと開く。
「向月台に、刀を突き刺さないでくださいよ。ほれ、あの遊び・・・棒の周りの砂をどんどんとっていって倒したら負けっていうヤツ、あれも駄目ですよ」
キュウゾウは背中の刀に伸ばした手を、引っ込めた。
「まったく。子供じゃないんですから、そんなことしないでください」
「やらん」
「あ。そうですか」
ヘイハチの見開かれていた目が、穏和ないつもの目に戻った。
しばらく二人で話もせずに、ぽけーっと庭園を眺めていた。
「キュウゾウ殿。清水寺へ行って、音羽の滝の縁結びの水を飲んでごらんなさい」
「縁結び?」
「カンベエ様に会えるように、っていうことですよ」
立ち上がったキュウゾウに、ヘイハチが懐からごそごそと取り出した袋を差し出す。
「はい、お土産。金米糖(コンペートー)です」
「子供じゃないって、さっき」
「子供♪子供♪」
ヘイハチは笑いながら、金米糖の包みをキュウゾウに握らせた。
不満そうに突っ立っているキュウゾウに向かって、
「行けぇーっ!」
と叫ぶ。目がらんらんと輝いている。
思わず、全速力で駆け出すキュウゾウ。
「うふふ。かないませんね、あの一途さ」
ヘイハチは自分も懐から金米糖を取り出すと、ぽいと口の中に入れた。先程のキュウゾウの指の感触が思い出されて、口の中はますます甘くなった。
(つづく)
お気をつけください。
ヘイハチの目の前を、ひらひらと誘うように舞っているものだから、むんずとその紅いものを摑んでしまった。途端に腕にかかる確かな重さ。そして殺気。
「あ・・・?」
とヘイハチが見上げると、自分の手の中にあるものと同じ色の瞳と出会った。
彼の紅い上着の端っこがヘイハチの手の中にあるせいで、すっかり上着の後ろがめくれあがってしまい(スカートめくり?)黒のボディスーツに覆われてはいるものの形の良い足があらわになっていた。
「キュウゾウ殿でしたか。いや、てっきり私はチョウチョを捕まえたと思いました」
キュウゾウが嫌そうに紅い上着を引っ張ると、ヘイハチの手からするりとその布が抜けていった。
「では、お詫びにおにぎりを差し上げましょう」
満面の笑みで、竹の皮の上に並んだおにぎりをひとつとると、キュウゾウに差し出した。だが、彼は小さく首を振って「いらない」という意思表示をした。
「そうですか。今朝、私が神無村を出る時にこさえてきたのですが、何かご不満でも?」
ヘイハチの目が、ゴゴゴッと(轟音?と共に)だんだん開かれて行く。
「いただこう」
キュウゾウはさっと、ヘイハチの手からおにぎりをとった。
ヘイハチの開きかけた目が、再び糸のように細められた。
「お粗末さまです」
銀閣寺の門の前で、男二人が向かい合っておにぎりを頬張っている。
キュウゾウがふっと手を伸ばして、ヘイハチの頬に触れた。
「?」
キュウゾウが自分の方へ向けた指の先には、飯粒が乗っていた。
「ありゃま、おべんとがついてましたか。こりゃどうも」
ヘイハチはあーんと口を開けて、キュウゾウの指ごとぱくっと食べてしまった。
その様子を見ていた、一部の女子達がざわついた。「キュウ×ハチ?」「ハチ×キュウよね」
キュウゾウはそろっと、ヘイハチの口から指を抜いた。
「カンベエは来たか」
キュウゾウが上着の端で指を拭くさまを見ながら、ヘイハチが答える。
「はて?私はひとりでこちらに来ましたので。カンベエ様は、えーと」
ヘイハチはおにぎりの包みを、しまい始めた。
「それよりも、私もまだ中に入っていないんですよ。一緒に銀閣を見ましょう」
キュウゾウの背中を押しながら進んで行くと、生垣の爽やかな緑が二人を迎えてくれた。現実から別の世界へ入ったような、そんな錯覚を起こさせる。
「赤い椿の花が、あなたの目の色に合っていますね」
そんなことを、ヘイハチはキュウゾウの目を覗き込む言い訳にした。
「金閣に比べて、地味ですけど、私はこちらの方が好きなんです。って、キュウゾウ殿!」
ヘイハチの目がぐわっと開いた。
「その白砂の上に、足跡をつけてはいけません」
キュウゾウが慌てて足を引っ込める。
「・・・承知」
まっさらな雪が積もっているのを見たら、この人、一番にその上を歩きたくなるんだろうな。と呆れながらも、その気持ちがわからないでもない。
キュウゾウの手が、そろそろと背中に伸びるのを見とがめたヘイハチ。
「それから」
目が、ぐわっぐわっと開く。
「向月台に、刀を突き刺さないでくださいよ。ほれ、あの遊び・・・棒の周りの砂をどんどんとっていって倒したら負けっていうヤツ、あれも駄目ですよ」
キュウゾウは背中の刀に伸ばした手を、引っ込めた。
「まったく。子供じゃないんですから、そんなことしないでください」
「やらん」
「あ。そうですか」
ヘイハチの見開かれていた目が、穏和ないつもの目に戻った。
しばらく二人で話もせずに、ぽけーっと庭園を眺めていた。
「キュウゾウ殿。清水寺へ行って、音羽の滝の縁結びの水を飲んでごらんなさい」
「縁結び?」
「カンベエ様に会えるように、っていうことですよ」
立ち上がったキュウゾウに、ヘイハチが懐からごそごそと取り出した袋を差し出す。
「はい、お土産。金米糖(コンペートー)です」
「子供じゃないって、さっき」
「子供♪子供♪」
ヘイハチは笑いながら、金米糖の包みをキュウゾウに握らせた。
不満そうに突っ立っているキュウゾウに向かって、
「行けぇーっ!」
と叫ぶ。目がらんらんと輝いている。
思わず、全速力で駆け出すキュウゾウ。
「うふふ。かないませんね、あの一途さ」
ヘイハチは自分も懐から金米糖を取り出すと、ぽいと口の中に入れた。先程のキュウゾウの指の感触が思い出されて、口の中はますます甘くなった。
(つづく)
-
2006/04/28 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行4

4.キュウタロウさん 《金閣》
一際大きな機械のサムライが、肩に可愛らしい少女を乗せて歩いている。
「あ!おっちゃま、あのキンキラキン頭は、キュウゾウ様ですよ」
「本当だ。おーい、キュウの字ぃー!」
キクチヨがあまりに大きな声で呼んだので、観光客達は一斉に道を空ける。キクチヨからキュウゾウまで一本の道ができた。
キュウゾウが、キクチヨの方へ歩いて来る。
「カンベエが来ていると聞いた」
「えーとですね」
キクチヨの上のコマチが、口を開いた。
コマチは、キララの計画に薄々感づいていた。だから、ここにキュウゾウが現れたということは・・・。
(姉様、負け戦ですね)
ならばせめて、キュウゾウがカンベエに会うことは阻止させてもらおう。そんなことで、姉の無念を晴らそうと考えた。
「おっさまは、金じゃなくて、銀の方へ行ったですよ。銀閣寺ですね」
「かたじけない」
と出口へ向かおうとするキュウゾウを、キクチヨが引き止めた。
「おいおい、せっかく来たんだからさ、ゆっくりしていけよ」
キクチヨがキュウゾウの肩に手を置こうとすると、その手首を彼に摑まれてしまった。
「相変わらず馬鹿力だなあ、こんなに細っこいのに」
キュウゾウはふん、と手首を放した。
キクチヨは金閣を見上げて、自慢げに言った。
「ほら、見てみろよ、キュウの字。この金閣っていうヤツは、俺様にぴったりじゃねェか。キンキラで派手なところが」
「キュウゾウ様の頭の色とも、おんなじですね」
とコマチも笑った。
その時、さあっと雨が降ってきた。キクチヨは慌ててコマチを抱え込んで、自分の懐で雨宿りさせた。
キュウゾウは空を見上げて、まるで雨の感触を楽しんでいるようだった。
雨はすぐに止んで、太陽が顔を覗かせた。
金閣が雨で洗われ日の光を受けて、その色を益々輝かせた。
「うわあ、綺麗ですねー!」
コマチは思わず歓声を上げた。
すると、キュウゾウが風を切って跳んだ。
「何だ、野伏せりか?」
とキクチヨは身構えた。
キュウゾウは、すたっと金閣の屋根の上に立った。
「おお!やるねぇ、キュウタロウさん!」
「カッコイイです、キュウゾウ様。あのニワトリみたいです」
「鳳凰っていうんだよ」
「凄い、おっちゃま。頭いいみたいです」
「俺達も跳ぶか」
「無理です」
「俺様、サムライでござるが」
「無理です」
コマチは再びキュウゾウを見上げた。
金閣と良く似合っている髪を、柔らかく風になびかせている。口を真一文字に引き結んで、目は一点を見詰めていた。その思い詰めた表情が、コマチには痛々しく見えた。
「おっさまのこと、考えているですかねえ」
悪いことをしたかと、小さな胸がきゅんと痛んだが、確か銀閣寺にはアノ人がいるからいいかな、と思い直した。
「はいそこ、そこのまっかっかな服で頭キンキラキンのおまえ!今すぐそこから降りなさい!」
拡声器でキュウゾウに呼びかけているのは・・・。
「げっ!ウキョウ!」
「なんで、ここにいるですか」
と、同時に声を上げてしまうキクチヨとコマチ。
すると、ウキョウは今度は拡声器をキクチヨとコマチの方に向けて、
「都といえば、天主でしょ」
と言い放った。
キュウゾウはふっと口の端だけで笑うと、飛んだ。ニワトリか?いや・・・。
「火の鳥・・・」
いつか姉に見せてもらった絵本に描かれていた、真紅に燃える綺麗な鳥のことをコマチは思い出した。
(つづく)
「あ!おっちゃま、あのキンキラキン頭は、キュウゾウ様ですよ」
「本当だ。おーい、キュウの字ぃー!」
キクチヨがあまりに大きな声で呼んだので、観光客達は一斉に道を空ける。キクチヨからキュウゾウまで一本の道ができた。
キュウゾウが、キクチヨの方へ歩いて来る。
「カンベエが来ていると聞いた」
「えーとですね」
キクチヨの上のコマチが、口を開いた。
コマチは、キララの計画に薄々感づいていた。だから、ここにキュウゾウが現れたということは・・・。
(姉様、負け戦ですね)
ならばせめて、キュウゾウがカンベエに会うことは阻止させてもらおう。そんなことで、姉の無念を晴らそうと考えた。
「おっさまは、金じゃなくて、銀の方へ行ったですよ。銀閣寺ですね」
「かたじけない」
と出口へ向かおうとするキュウゾウを、キクチヨが引き止めた。
「おいおい、せっかく来たんだからさ、ゆっくりしていけよ」
キクチヨがキュウゾウの肩に手を置こうとすると、その手首を彼に摑まれてしまった。
「相変わらず馬鹿力だなあ、こんなに細っこいのに」
キュウゾウはふん、と手首を放した。
キクチヨは金閣を見上げて、自慢げに言った。
「ほら、見てみろよ、キュウの字。この金閣っていうヤツは、俺様にぴったりじゃねェか。キンキラで派手なところが」
「キュウゾウ様の頭の色とも、おんなじですね」
とコマチも笑った。
その時、さあっと雨が降ってきた。キクチヨは慌ててコマチを抱え込んで、自分の懐で雨宿りさせた。
キュウゾウは空を見上げて、まるで雨の感触を楽しんでいるようだった。
雨はすぐに止んで、太陽が顔を覗かせた。
金閣が雨で洗われ日の光を受けて、その色を益々輝かせた。
「うわあ、綺麗ですねー!」
コマチは思わず歓声を上げた。
すると、キュウゾウが風を切って跳んだ。
「何だ、野伏せりか?」
とキクチヨは身構えた。
キュウゾウは、すたっと金閣の屋根の上に立った。
「おお!やるねぇ、キュウタロウさん!」
「カッコイイです、キュウゾウ様。あのニワトリみたいです」
「鳳凰っていうんだよ」
「凄い、おっちゃま。頭いいみたいです」
「俺達も跳ぶか」
「無理です」
「俺様、サムライでござるが」
「無理です」
コマチは再びキュウゾウを見上げた。
金閣と良く似合っている髪を、柔らかく風になびかせている。口を真一文字に引き結んで、目は一点を見詰めていた。その思い詰めた表情が、コマチには痛々しく見えた。
「おっさまのこと、考えているですかねえ」
悪いことをしたかと、小さな胸がきゅんと痛んだが、確か銀閣寺にはアノ人がいるからいいかな、と思い直した。
「はいそこ、そこのまっかっかな服で頭キンキラキンのおまえ!今すぐそこから降りなさい!」
拡声器でキュウゾウに呼びかけているのは・・・。
「げっ!ウキョウ!」
「なんで、ここにいるですか」
と、同時に声を上げてしまうキクチヨとコマチ。
すると、ウキョウは今度は拡声器をキクチヨとコマチの方に向けて、
「都といえば、天主でしょ」
と言い放った。
キュウゾウはふっと口の端だけで笑うと、飛んだ。ニワトリか?いや・・・。
「火の鳥・・・」
いつか姉に見せてもらった絵本に描かれていた、真紅に燃える綺麗な鳥のことをコマチは思い出した。
(つづく)
-
2006/04/26 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行3

3.素晴らしい人です 《東映太秦映画村》
修学旅行生と一緒に写真を撮っていたカツシロウは、見覚えのある紅い姿を見つけて、慌てて後を追った。
「キュウゾウ殿!」
背後から近づいたのが、いけなかったらしい。振り向きざまに抜刀され、切っ先がカツシロウの鼻先に突きつけられた。
「死にたいのか」
途端に、修学旅行生達が携帯電話のカメラを一斉に向ける。
「すっごーい!本物みたーい」
カツシロウは、といえば
「あ、貴方は素晴らしい人です」
今回もこの台詞で、ごまかしたのであった。
「カンベエは一緒か」
「いえ。先生達は先に発たれました」
キュウゾウはがっかりしたように、刀を収めた。
「キュウゾウ殿、実は私、財布を落としてしまいまして、ここでアルバイトをしているのです。少し融通して頂けると、ありがたいのですが」
「おのれの始末は、おのれでつけよ」
「先生と同じことを」
カツシロウは、大きなため息をつく。
「だが、だんごぐらいはおごってやろう」
信じられない、キュウゾウの優しい言葉であった。
「貴方は、素晴らしい人です」
今度は心から言った、カツシロウであった。
茶店に入って腰を下ろすと、キュウゾウは刀を傍らに置いた。すぐに熱い茶とだんごが運ばれて来た。
「キャーッ!」きぬを裂くような女の悲鳴。(ベタだ)
キュウゾウは右手でだんごをかっさらい、左手で刀をひっつかむと飛び出して行った。
「お待ちください、キュウゾウ殿!」
私のだんごまで!焦るカツシロウ。
「あ!忍者だ!」
子供が指差している方向を見ると、屋根から屋根へぴょんぴょん跳んで行く紅い姿が。口にはだんごをくわえている。
観光客達が喜んで、その姿をビデオに撮っている。
キュウゾウは女性を助けに行ったのではない、とカツシロウは確信していた。女の悲鳴のあるところ、もめごとあり=喧嘩だ。
彼は斬り合いをしたいだけなのだ。
「アノ人の頭の中、きっと和太鼓が鳴っているよ。戦闘態勢に入っちゃってるよ」
案の定、カツシロウが捨てられただんごの串をたどっていったところ、桜の木の下でキュウゾウがサムライ達と睨み合っていた。いや、一方的に彼が睨んでいた。
しかも、刀を抜いているし・・・。
「参る」
「らないでください!」
カツシロウの叫び声に、サムライ達に向かって突撃して行く気満々だったキュウゾウが足を止める。不満そうにカツシロウを見た。
「その方達は、サムライではありません。役者さんです。これは映画の撮影ですよ」
キュウゾウが刀を収めて、やっとその場の緊張が解けた。
「キュウゾウ殿、さっさと先生を追って行っちゃってください。私、アルバイトをクビになってしまいます」
「どこへ?」
「確か、金閣とか」
「ヤツは俺が斬る」
「はいはい」
「『はい』はひとつ」
「・・・はい」
キュウゾウが去って行く後ろ姿を見送っていると、映画監督がカツシロウのところに寄って来た。
「カツシロウ君、彼、いいねえ。雰囲気あるよ。知り合いならスカウト、してきてよ」
「やめた方がいいですね。あの人、本気でエキストラの方々を斬りますよ」
カツシロウの冷めたもの言いに、監督は背筋が寒くなった。
「おごってもらう御方を、誤った。キュウゾウ殿・・・だんご代は私が払っておきました」
カツシロウは、もう見えなくなってしまったキュウゾウに愚痴った。
(つづく)
「キュウゾウ殿!」
背後から近づいたのが、いけなかったらしい。振り向きざまに抜刀され、切っ先がカツシロウの鼻先に突きつけられた。
「死にたいのか」
途端に、修学旅行生達が携帯電話のカメラを一斉に向ける。
「すっごーい!本物みたーい」
カツシロウは、といえば
「あ、貴方は素晴らしい人です」
今回もこの台詞で、ごまかしたのであった。
「カンベエは一緒か」
「いえ。先生達は先に発たれました」
キュウゾウはがっかりしたように、刀を収めた。
「キュウゾウ殿、実は私、財布を落としてしまいまして、ここでアルバイトをしているのです。少し融通して頂けると、ありがたいのですが」
「おのれの始末は、おのれでつけよ」
「先生と同じことを」
カツシロウは、大きなため息をつく。
「だが、だんごぐらいはおごってやろう」
信じられない、キュウゾウの優しい言葉であった。
「貴方は、素晴らしい人です」
今度は心から言った、カツシロウであった。
茶店に入って腰を下ろすと、キュウゾウは刀を傍らに置いた。すぐに熱い茶とだんごが運ばれて来た。
「キャーッ!」きぬを裂くような女の悲鳴。(ベタだ)
キュウゾウは右手でだんごをかっさらい、左手で刀をひっつかむと飛び出して行った。
「お待ちください、キュウゾウ殿!」
私のだんごまで!焦るカツシロウ。
「あ!忍者だ!」
子供が指差している方向を見ると、屋根から屋根へぴょんぴょん跳んで行く紅い姿が。口にはだんごをくわえている。
観光客達が喜んで、その姿をビデオに撮っている。
キュウゾウは女性を助けに行ったのではない、とカツシロウは確信していた。女の悲鳴のあるところ、もめごとあり=喧嘩だ。
彼は斬り合いをしたいだけなのだ。
「アノ人の頭の中、きっと和太鼓が鳴っているよ。戦闘態勢に入っちゃってるよ」
案の定、カツシロウが捨てられただんごの串をたどっていったところ、桜の木の下でキュウゾウがサムライ達と睨み合っていた。いや、一方的に彼が睨んでいた。
しかも、刀を抜いているし・・・。
「参る」
「らないでください!」
カツシロウの叫び声に、サムライ達に向かって突撃して行く気満々だったキュウゾウが足を止める。不満そうにカツシロウを見た。
「その方達は、サムライではありません。役者さんです。これは映画の撮影ですよ」
キュウゾウが刀を収めて、やっとその場の緊張が解けた。
「キュウゾウ殿、さっさと先生を追って行っちゃってください。私、アルバイトをクビになってしまいます」
「どこへ?」
「確か、金閣とか」
「ヤツは俺が斬る」
「はいはい」
「『はい』はひとつ」
「・・・はい」
キュウゾウが去って行く後ろ姿を見送っていると、映画監督がカツシロウのところに寄って来た。
「カツシロウ君、彼、いいねえ。雰囲気あるよ。知り合いならスカウト、してきてよ」
「やめた方がいいですね。あの人、本気でエキストラの方々を斬りますよ」
カツシロウの冷めたもの言いに、監督は背筋が寒くなった。
「おごってもらう御方を、誤った。キュウゾウ殿・・・だんご代は私が払っておきました」
カツシロウは、もう見えなくなってしまったキュウゾウに愚痴った。
(つづく)
-
2006/04/24 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行2

2.馬鹿め 《二条城》
京都駅で、ヒョーゴはお手製の旗を手にそわそわしていた。
先程到着した神無村のサムライ一行の中に、キュウゾウの姿はなかった。後から来るだろう、と聞いてヒョーゴはそのまま駅で彼を待っていた。
「ほんっとに、手のかかるヤツだ。団体行動ぐらいできんのか」
その横を、紅い影が通り過ぎて行く。
「おい!」
慌ててヒョーゴが呼び止めると、懐かしい紅い瞳が自分を見た。
「この旗が見えなかったのか」
と手にした旗を、ぱたぱたと振った。
『キュウゾウ様とその他大勢のオサムライ様ご一行』
キュウゾウの目が細められた。明らかに嫌悪感を示している。
「まあいい。(無視しよう)ここから、俺が案内役だ。行くぞ」
「カンベエは?」
「殺すぞ」
他の男の名前なんか出しやがって・・・。この、いけず。
−移動中−
「ここが二条城だ。戦艦に似ているな。戦を思い出す」
「飛ぶのか?」
「飛ばんわ!さあ、中へ入るぞ」
旗を振りながら歩くヒョーゴの後を、キュウゾウがついて行く。
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
キュウゾウが、足を止める。
「びくうっとかするな。廊下は、うぐいす張りになっておるのだ」
ふっと笑うヒョーゴ。
「それとも、おまえのそのヒヨコ色の頭から、声がするのかな?」
キュウゾウが刀に手をやる。
「抜くな!柱一本でも切ってみろ。おまえひとりが切腹しても、済まぬからな。ここは世界文化遺産に」
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
「おい!先に行くな。・・・ねえ、人の話、聞いてた?」
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
庭園に出ると、春の風が心地良い。ヒョーゴの口も軽くなる。
「花も咲いて、いい季節になったな」
「カ」
「あのおっさんの名をだすな」
「ふーん。おまえが、これほどまでにこだわるのは・・・アレか」
キュウゾウの目が、ヒョーゴの下方へ。
「な、何だ?」
キュウゾウは、口の端だけで笑った。
「あ!おまえ、思い出したな!俺の心の傷を」
ヒョーゴの顔が、真っ赤になってしまう。そして逆襲を考えた。
「おまえこそ、ソコを毎晩、あの変態おやじに可愛がられているんじゃないのか」
子供の耳を塞いで、家族連れが足早に通り過ぎて行く。一部の女性達が、好奇な目を向けてきた。
キュウゾウは、背中の二振りの刀を抜いた。
「おまえは世界文化遺産とやらではないから、斬ってもいいんだよな」
ヒョーゴもすらりと刀を抜いた。
「長い台詞をよく言えました!だが、手加減はせんぞ」
「参る」
風を切って、キュウゾウが走る。ヒョーゴが迎え撃つ。
「キュウゾウーーーォ!!!」
眼鏡に映る、キュウゾウの姿。
ヒョーゴの簪(かんざし)が真っ二つになって、地面に落ちた。ヒョーゴはがっくりと膝を折る。
立ち去ろうとするキュウゾウの背に向かって、ヒョーゴが言った。
「太秦には、サムライが大勢いるそうだ。そこにいるかもしれんぞ、あのおっさん」
「かたじけない」
キュウゾウが去ってしまうと、ヒョーゴは
「馬鹿・・・め」
半分はキュウゾウに、半分は自分に向かって呟いた。
(つづく)
☆ すみません。
二条城のうぐいす張りの廊下が、ピヨピヨとヒヨコの声に聞こえてしまいました。
先程到着した神無村のサムライ一行の中に、キュウゾウの姿はなかった。後から来るだろう、と聞いてヒョーゴはそのまま駅で彼を待っていた。
「ほんっとに、手のかかるヤツだ。団体行動ぐらいできんのか」
その横を、紅い影が通り過ぎて行く。
「おい!」
慌ててヒョーゴが呼び止めると、懐かしい紅い瞳が自分を見た。
「この旗が見えなかったのか」
と手にした旗を、ぱたぱたと振った。
『キュウゾウ様とその他大勢のオサムライ様ご一行』
キュウゾウの目が細められた。明らかに嫌悪感を示している。
「まあいい。(無視しよう)ここから、俺が案内役だ。行くぞ」
「カンベエは?」
「殺すぞ」
他の男の名前なんか出しやがって・・・。この、いけず。
−移動中−
「ここが二条城だ。戦艦に似ているな。戦を思い出す」
「飛ぶのか?」
「飛ばんわ!さあ、中へ入るぞ」
旗を振りながら歩くヒョーゴの後を、キュウゾウがついて行く。
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
キュウゾウが、足を止める。
「びくうっとかするな。廊下は、うぐいす張りになっておるのだ」
ふっと笑うヒョーゴ。
「それとも、おまえのそのヒヨコ色の頭から、声がするのかな?」
キュウゾウが刀に手をやる。
「抜くな!柱一本でも切ってみろ。おまえひとりが切腹しても、済まぬからな。ここは世界文化遺産に」
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
「おい!先に行くな。・・・ねえ、人の話、聞いてた?」
♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪
庭園に出ると、春の風が心地良い。ヒョーゴの口も軽くなる。
「花も咲いて、いい季節になったな」
「カ」
「あのおっさんの名をだすな」
「ふーん。おまえが、これほどまでにこだわるのは・・・アレか」
キュウゾウの目が、ヒョーゴの下方へ。
「な、何だ?」
キュウゾウは、口の端だけで笑った。
「あ!おまえ、思い出したな!俺の心の傷を」
ヒョーゴの顔が、真っ赤になってしまう。そして逆襲を考えた。
「おまえこそ、ソコを毎晩、あの変態おやじに可愛がられているんじゃないのか」
子供の耳を塞いで、家族連れが足早に通り過ぎて行く。一部の女性達が、好奇な目を向けてきた。
キュウゾウは、背中の二振りの刀を抜いた。
「おまえは世界文化遺産とやらではないから、斬ってもいいんだよな」
ヒョーゴもすらりと刀を抜いた。
「長い台詞をよく言えました!だが、手加減はせんぞ」
「参る」
風を切って、キュウゾウが走る。ヒョーゴが迎え撃つ。
「キュウゾウーーーォ!!!」
眼鏡に映る、キュウゾウの姿。
ヒョーゴの簪(かんざし)が真っ二つになって、地面に落ちた。ヒョーゴはがっくりと膝を折る。
立ち去ろうとするキュウゾウの背に向かって、ヒョーゴが言った。
「太秦には、サムライが大勢いるそうだ。そこにいるかもしれんぞ、あのおっさん」
「かたじけない」
キュウゾウが去ってしまうと、ヒョーゴは
「馬鹿・・・め」
半分はキュウゾウに、半分は自分に向かって呟いた。
(つづく)
☆ すみません。
二条城のうぐいす張りの廊下が、ピヨピヨとヒヨコの声に聞こえてしまいました。
-
2006/04/23 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲
連載・おサムライ様紀行1

☆ 今日からキュウゾウ殿が京の都を旅する、おサムライ様紀行の連載がスタートします。
だいぶおふざけが入ってしまうので、ご注意ください。
各所で、他のおサムライ様達がキュウゾウ殿の案内役をしてくれます。
皆様お元気です。生きていらっしゃいます。
1.出立 《神無村》
*キララが黒いので、注意してください。
キララが旅支度をしている。かなり慌てている様子。
カタンと小さく音をたてて、戸が開いた。キララが振り向くと、キュウゾウが欠伸を噛み殺しながら立っていた。
キララはお泊りセットの入った包みを、押入れの方へ蹴飛ばしながら立ち上がった。
「キュウゾウ様、おはようございます」
にっこりと微笑む。心の乱れを、彼に感づかれてはならない。
「サムライ達がいない。カンベエも」
「皆さん、ご不浄かしらん」
キュウゾウの紅い瞳がキラリと光る。同時に背中の刀を抜く。と、キララの着物の袂が切れて、小さな袋がヒラリと地面に舞い落ちた。
「そ、それは・・・」
「俺宛てだな」
袋の表書きには、ご丁寧にもカンベエの字で『キュウゾウへ。早く追って来い』とあった。中には列車の切符が入っている。
キララは大きなため息をついた。
「キュウゾウ様、皆様はミヤコへ向かいました」
走り出そうとするキュウゾウを引き止めて
「いえ、そちらではなく、京の都です」
ちょうどそこへ、呼んでおいた早亀タクシーが来たので、それにキュウゾウを乗せてさっさと送り出した。
「駅まで、おサムライ様をお送りしてください」
昨夜、キュウゾウの徳利にだけ睡眠薬を入れて、とびっきりの笑顔で(カツシロウ様が柱の陰から見ていたっけ)彼に酌をした。それを飲み干すキュウゾウの喉元を、じっと見ていた。
「ご返杯を」
「いただきます」
酒は嫌いな方ではなかった。(未成年?だよね)
ごっくん・・・しまった!
二人同時にばったり倒れて、そのまま爆睡した。
「私が薬を盛ったことを、ご存知でしたのね。私の顔を立てて飲んでくださった・・・。それがキュウゾウ様の気遣いですか。その後、相討ちにもつれこむとは、さすがはおサムライ様」
キュウゾウを押しのけ、京都でカンベエと甘い夜を過ごそうという計画は、見事に失敗したのであった。キララの手の中の水晶が、濁った光を放つ。
「渇いているのは、私の方なのよねぇ。愛に飢えてるっていうのかなー」
キララは遠い目をした。
(つづく)
*キララが黒いので、注意してください。
キララが旅支度をしている。かなり慌てている様子。
カタンと小さく音をたてて、戸が開いた。キララが振り向くと、キュウゾウが欠伸を噛み殺しながら立っていた。
キララはお泊りセットの入った包みを、押入れの方へ蹴飛ばしながら立ち上がった。
「キュウゾウ様、おはようございます」
にっこりと微笑む。心の乱れを、彼に感づかれてはならない。
「サムライ達がいない。カンベエも」
「皆さん、ご不浄かしらん」
キュウゾウの紅い瞳がキラリと光る。同時に背中の刀を抜く。と、キララの着物の袂が切れて、小さな袋がヒラリと地面に舞い落ちた。
「そ、それは・・・」
「俺宛てだな」
袋の表書きには、ご丁寧にもカンベエの字で『キュウゾウへ。早く追って来い』とあった。中には列車の切符が入っている。
キララは大きなため息をついた。
「キュウゾウ様、皆様はミヤコへ向かいました」
走り出そうとするキュウゾウを引き止めて
「いえ、そちらではなく、京の都です」
ちょうどそこへ、呼んでおいた早亀タクシーが来たので、それにキュウゾウを乗せてさっさと送り出した。
「駅まで、おサムライ様をお送りしてください」
昨夜、キュウゾウの徳利にだけ睡眠薬を入れて、とびっきりの笑顔で(カツシロウ様が柱の陰から見ていたっけ)彼に酌をした。それを飲み干すキュウゾウの喉元を、じっと見ていた。
「ご返杯を」
「いただきます」
酒は嫌いな方ではなかった。(未成年?だよね)
ごっくん・・・しまった!
二人同時にばったり倒れて、そのまま爆睡した。
「私が薬を盛ったことを、ご存知でしたのね。私の顔を立てて飲んでくださった・・・。それがキュウゾウ様の気遣いですか。その後、相討ちにもつれこむとは、さすがはおサムライ様」
キュウゾウを押しのけ、京都でカンベエと甘い夜を過ごそうという計画は、見事に失敗したのであった。キララの手の中の水晶が、濁った光を放つ。
「渇いているのは、私の方なのよねぇ。愛に飢えてるっていうのかなー」
キララは遠い目をした。
(つづく)
-
2006/04/22 |
- SAMURAI7 |
- Comment: 0 |
- − | [Edit]
- ▲




