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抱きしめたいのに 13

「抱きしめても怒りませんか?」の妄想がぐるぐるしている文章「抱きしめたいのに」の第十三話をUPしました。



「なあ、佐倉はどうして就職したの?」

「ウチって進学校だろ、珍しいよな」

「よく親が許したね」

 そうか、彼らには、上の学校に進むのは当たり前なんだ。

 進学への道が断たれるなんて、考えも及ばないんだな。

 そして親がいるのも当然・・・か。

 俺は酒の力を借りて、あの頃友人には言えなかったことを打ち明ける。

「親が許すも何も、あの人達が離婚するんで、ついでに独立したんだ。
 自分の食い扶持は、自分で稼ごうってね」

「へえ、カッコイイ!」

「格好良くなんかないよ」

 ・・・しょっちゅう金の心配をしていなくちゃならないなんて。

「あ、じゃあ、修学旅行に来なかったのも、そのせい?」

 神山がしらっと訊いてくる。

 目を伏せた俺を見て、石井が神山を突つく。

 あれは忘れられない。

 あの日まで俺は修学旅行に行くつもりだった、高校生活最後の思い出として。

 修学旅行のグループ分けをしていた時、担任に呼ばれた。

「佐倉、図書館で自習していてもいいんだぞ」

「え?どういう意味ですか?」

 訊き返す俺の声が、大きかったらしい。

 クラスの皆がこちらに注目した。

 俺の顔色を見て、担任が慌てた。

 母が修学旅行には参加できないと言ってきたのだと、教えてくれた。

 積み立ててきた金は、返還される。

「佐倉、おまえ知らなかったのか?」 

 忘れてました、という間抜けな返事をするのが精一杯だった。

 困惑した顔を隠すこともできず、俺は教室を出た。

「俺、憶えてるぜ」 

 滝本の言葉が、あの時の惨めな気持ちに重なる。

「あの時、教室がしーんとなっちゃったもんな」

 くくく、と哂う滝本。

 そして他の三人も。

 コイツら・・・面白がってる?


                          (つづく)

 

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