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抱きしめたいのに 14

「抱きしめても怒りませんか?」の妄想がぐるぐるまわっている文章「抱きしめたいのに」の第十四話をUPしました。
 



 俺は駅ビルの中華料理店で、高校の時の同級生である女子二人、男子二人と一緒に夕食をとっていた。

 本当は駅前のスーパーで買った食材を佐倉先輩と二人で調理して、あまーい時を過ごしているはずなのに。

「慎ちゃん、どうした?食欲ないのか?」

 友人に言われて、俺ははっと顔を上げた。

「携帯、彼女だったんでしょ?」

 女の子が言ってくる。

「絶妙なタイミングで、コイツのオカマ声が入っちゃったもんねー」

 別の女の子が、先ほど俺と先輩の会話に割り込んだ男子を小突く。

「慎ちゃん、こじれないうちに、取敢えず謝っとけ!」

 こういうことになると、女の子達はノってくる。

「今は、ダメかも」

「ん?そんなに頭が固い女なん?」

 男は鈍い。

「そういうんじゃなくて・・・俺が浮かれ過ぎてるのかな。
 一緒に歩いているつもりだったのに、気がつくとその人は俺の後ろで立ち止まっていて・・・。
 なんか、そこに溝を感じるんだ」

「ふーん、向こうが恋愛に臆病になってるってこと?」

 女の子達はいよいよ真剣に、俺の恋愛相談に乗ってくれるようだ。

「恋愛だけじゃない、と思う」

「そうなんだ・・・。
で、その人、慎ちゃんのコト、ちゃんと好きなの?」

「うん、たぶん」

「ははは、ごちそうさま」

 やっかむのは、男の方か。

「その人、あんまり幸せじゃなかったのかも、慎ちゃんに逢うまでは」

「え?」

 思い当たる俺。

「だから、怖いのよ」

「そうね、慎ちゃんが現れるまで、世の中に自分を愛してくれる人がいるなんて思ってもみなかった・・・」

 放課後の渡り廊下、夕陽が照らし出す佐倉先輩の姿はどこか寂しげだった。

「それが突然、自分を愛してくれる人が現れて」

「自分もその人が好きなんだって、気がついて」

 女の子達が、手を取り合う。

「とっても幸せになって」

 女の子達の目が、キラキラ輝いている。

 もう男達は口を挟めない。

「でもね」

 女の子達は、がっくりと肩を落とす。

「いつかこの幸せも、消えてしまうんじゃないかって、怖くなるの」

 そういうことだったのだろうか、佐倉先輩。

 そんなの切ないよ・・・だったら俺は。


                        (つづく)

 

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